1978年 第084回国会 社会労働委員会 第14号 より抜粋

第084回国会 社会労働委員会 第14号

引用元
http://kokkai.ndl.go.jp/SENTAKU/syugiin/084/0200/08404180200014c.html

発言者情報

労働大臣      藤井 勝志
労働大臣官房参事官 鹿野 茂
労働省労働基準局監督課長 小粥 義朗
日本共産党 田中 美智子

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○住委員長代理 次に、田中美智子君。

○田中(美)委員 全国紙の新聞配達を何年間やっていれば貸与した奨学金を免除するという奨学制度の問題について質問したいわけです。何々育英奨学会というのがありますけれども、これは大学と専修学校を対象にしているもので、それとは違いますので、非常に紛らわしいので、お間違いにならないようにしていただきたいのですけれども、各種学校、それから専修学校もあるのですけれども、主に各種学校に向けて〇〇奨学会というふうなものを常設しているところが多いわけです。この奨学制度というのは、新聞販売店に学生を紹介するのを業務としているのではないかというふうに、私が調査したのでは思えるわけです。
 たとえば、学校法人の千代田学園という学園の中に奨学会というのがあります。そして全国紙の新聞販売店に学生を紹介する業務をやっているわけです。これは、無料職業紹介をやろうとする者は職業安定法第三十三条によって労働大臣の許可を受けなければならないというふうに思うわけですけれども、この千代田学園の奨学会というのは、労働大臣の許可を受けているのでしょうか。

○鹿野説明員 許可を受けておりません。

○田中(美)委員 そうすると、ここの奨学会は法を無視して職業紹介業をやっているということですね。ですから仮に、この奨学会が職安法に基づいて許可の申請をした場合には、労働省としては許可をできる状態であるかどうかというふうに思うわけです。その点をちょっと。いまの状態で、申請していないが、もし申請すればいいのかということでしたら、許可が受けられるかどうかということです。

○鹿野説明員 ただいま御指摘いただきました千代田学園における問題でございますけれども、確かに奨学会の専従の方がおられまして、いわゆる奨学生の募集事務を行っておるわけでございます。その募集事務を行う際に、当然これは条件の一つでございますので、就労する新聞販売店を特定しなければならない。そういう意味で、特定の新聞販売店を紹介するということが、この事業の中に入ってしまっている。このことが直ちに職業紹介業務あるいは職業紹介事業と言えるかどうかは非常に疑問のあるところでございますけれども、ただ特定の販売店を紹介していくというその形を見ますと、非常に職業紹介に類似した形であるわけで、私どもは好ましいものではないというふうに考えておるわけでございます。そういう意味で、一定の是正指導をしてまいりたいと思うわけでございますが、ただいま御指摘いただきましたように、では、この奨学会が職業安定法三十三条に基づく労働大臣の許可を申請した場合に、どうなのかということにつきましては、この奨学会の性格あるいは団体の役割り等をもう少し検討してみないと、何とも申し上げられないというふうに考えています。

○田中(美)委員 私としては、いまのところでは業をしているというか、非常に脱法行為というふうに見えるわけなんですね。それで私としては、労働大臣の許可を受けているのは千代田学園なわけですから、この学園が自分の学生をアルバイトとして紹介する、それには、これこれ、こういう条件でこうなんですという形で紹介するように、すっきりとした形に改善させていただきたい。そうしませんと、いかにも奨学会という、いわゆる大学生が奨学資金をもらうというふうに親は誤解するわけですね。その上には全国紙の名前が出ていますので、全くその新聞社が責任を持ってやっているんじゃないかというふうに誤解をするようにできていて、実際には、どこにも責任を持つ人がいない。親がだまされたんだというので学校へ行ったら、学校は知らないという。奨学会に行ったら、奨学会は知らないという。販売店に聞けという形で、どこにも苦情の持っていきようがないという状態が起きているので、これはぜひもっとすっきりとした指導をさせていただきたいというふうに思います。まず、この千代田学園が職業をあっせんする、アルバイトをあっせんするというふうにはっきりとする。そうすれば千代田学園は責任を持つわけですから、そういうふうに御指導をしていただきたいというふうに思います。大臣、それはよろしいですね。

○鹿野説明員 確かに奨学生の募集事務と就職のあっせんということは、それぞれ別の行為でございます。奨学会におきましては奨学生の募集事務を行う。それから就職あっせんは、先生御指摘のように、千代田学園においては三十三条の許可を得ておりますので学園の紹介機関が行う、こういうような形で指導してまいりたいというふうに考えております。

○田中(美)委員 そうしますと、結局この奨学会というのは学園の中に部屋もあるし、人もいるという形ですから、口ではどういうふうにでも言えるわけですよね。実際には千代田学園に行ったら、親に対しては知らぬ、こういうわけですからね。それがいままでのような形をとっている限りは、常時そこでは何をしているのかということを監視しない限りは、これはできないことにならないかというふうに私は思いますので、ここのところの指導が非常にむずかしいというふうに思うのです。結局、これはこのままの形で、そこは販売店は紹介しないんだということになるわけですね、あなたのいまおっしゃることだと。そういうことはしない。そうするとお金だけを貸すというわけですか。奨学会の業務というのはどういうことになるわけですか。

○鹿野説明員 奨学生の募集につきましては、私どもの関与するところではございませんけれども、一応、新聞販売店に勤務するということを条件にして奨学生になるという資格が得られるというふうに考えておるわけでございます。したがいまして、その奨学会におきましては、奨学生になるかならないか、あるいはなる資格があるのかどうか、そういう決定は奨学会の方にしていただく。そして、その奨学生になろうという方々に対して個別の販売店をあっせんするという行為は学園の紹介機関でやっていただく。こういうような形になろうかと思います。

○田中(美)委員 そういうふうにすれば幾らでも脱法行為はできますね。名前だけで、ここで奨学生になりますかということは、もう販売店に行きますかということですからね。そうすると学校が販売店を紹介するということですね。そうすると、よほどこれがきっちりといかないと、学校の方がきちんとした責任を持たないと、奨学制度という名のもとに学生が被害を受けるという結果が起きるというふうに思うわけです。
 私が非常に心配しますのは、調べたわけではありませんけれども、奨学会というものの窓口で聞いてみましたら、三分の一以上はやめていくというんですね。やめていくというのは、お金を返すわけですからね。奨学金として最初出してもらったお金は全部返すということ。返して、やめていくということは、みすみす何の恩典も受けられなかったということです。いわゆる育英奨学会というのでしたらば、大学一年生でやめてしまった場合には、その授業料は免除とか、入学金は一年ならば何分の一とか、二年目なら何分の一とかいうふうになっていくから、そんな大きな金額じゃないわけです。しかし、この場合には大変な金額というものを最初から借りておいて、それを全部返していく。そのお金は、もともとお金がないから借りた人なんです。それを無理して人から借金したりして返してやめていく人が三分の一以上いる。あとの三分の二弱の人たちというのは、その中の何人が学校をちゃんと卒業しているかというと、個々に聞いた学生によると、自分たちはほとんど知らないというんですね。卒業したという人を聞いたことがないというふうな現状になっているわけです。
 どうして、そうなるのかということを少しお話ししたいわけですけれども、この奨学会というのは、もともとが販売店主の連合体であるということは、お調べの結果よくおわかりになったと思うのです。
    〔住委員長代理退席、竹内(黎)委員長代理着席〕
二年間、新聞配達を販売店でやれば、入学金、授業料、実習費、こういうものが約五十万六千円とか、ほかのものが入りますと、もうちょっとになりますけれども、五、六十万の金を一遍に出してくれるわけですね。そして販売店、つまり使用主のところから新聞配達をしながら学校へ行く。やめたときには、これを全部返さなければならないということになっているわけです。ですから、三分の一以上の人は五、六十万払ってやめているわけです。これは労働基準法の十六条に抵触するのではないか。「使用者は、労働契約の不履行について違約金を定め、又は損害賠償額を予定する契約をしてはならない。」ということになるのではないかというふうに思うのですけれども、その点はどうですか。

○小粥説明員 奨学会は販売店主の団体が実質的にバックになっているというふうに承知いたしているわけでございます。一応、奨学会という別の名前でやっているわけでございます。
 それで、基準法の十六条の問題になりますと、個々の使用者が、そこの販売店に働く従業員に対して、たとえば労働契約の不履行について違約金を取る、あるいは損害賠償額を予定するということになれば、明らかに基準法十六条違反となりますが、別個の団体である奨学会の名においてやる場合、直ちに基準法十六条違反になるかどうか、形の上ではなかなかむずかしい問題があろうかと思います。それで、その奨学会という名前の団体が必ずしも団体の体をなさないで、むしろ実体的に個々の使用者が、その販売店に働く労働者と、そういう契約を、貸借関係を結ぶということになりますと、基準法十六条の問題に該当してくるケースが出てこようかと思っております。

○田中(美)委員 結局、脱法行為をしているんじゃないかというのが私の言うことで、それがはっきりしていれば即簡単にわかるわけですけれども、結局、逃げているわけです。実際には、ちゃんと資金というお金があって、奨学会がお金を貸与しているという、そういう契約ではないですね。この契約書を見てみましても、この中に就業規則を遵守せよとかというようなことが書かれている。そして借用証書に書かれているものは、千代田学園の奨学会殿になっているのですけれども、この奨学会殿イコール販売店なんですね。現実はそうなんです。その奨学会の窓口の人に聞いても、金は自分のところで持っていませんということです。ですから全部販売店に、行きたいという子がありましたから、あなたのところはすぐ授業料を払いなさい、入学金を払いなさい、こう言うわけです。そこでの契約は販売店になっているわけです。ですから、返さなければならない相手は、あなたがおっしゃるように、奨学会というのがある程度あって、労働基準法違反でないというのだったらば、奨学会に返すなら、まだわかるわけですけれども、実際に返すのは販売店に返すわけです。ここのところをしっかりしていただかない限りは、この悲劇は絶対に直らないと私は思うのです。無料の職業紹介をやっていたか、やってなかったかという問題よりも、一番大事なのはここなんだというふうに思うのです。それで半年くらいたって、大体だまされたというふうに気がつくというのです。もうとてもやっていけないというのです。
 それで、これはたとえば業務がどんなふうになっているかといいますと、この中にはこんなふうに書いてあります。これは募集の中に書いてあるのです。「時間的には販売店により小差があり、」「朝夕2回、夕刊配達は短時間で済みます。」だから「奨学会は、勉強する青年のための制度です。奨学会(販売店)が率先して勉学に支障のない日課を提示しています」きちっと印刷で、奨学会と書いて括弧して販売店と書いてあるのです。ということは、奨学会イコール販売店になっているのです。
 そして朝夕の新聞配達三百部は「短時間で済みます。」と書いてあるのですけれども、販売店に働いている何人かの新聞少年に実際に聞いてみますと、大体朝四時に起きるそうです。四時に暗いときに起きて、広告の折り込みをやるわけですね。そして五時から配達に行く。大臣、聞いていてください。これは十八歳の少年ですからね。高校を出てから来るわけです。それで今度五時から七時までで大体三百部の新聞配達が終わるわけです。そして朝御飯を食べて学校に行くわけです。それから、学校から四時過ぎに販売店に帰ってくるわけです。そして六時半まで夕刊の配達を三百部やるわけです。それから三十分で夕食を済ませて、それから今度七時から九時まで集金という業務があるんですね。この中にはそんなことは全然書いてないんです。朝晩の新聞配達だけだ、そして「短時間で済みます。」とここに書いてあるわけです。それなのに、この子供たちは七時から九時まで集金をやるわけです。その上に今度は日にちを限って拡張をさせられる。これは、ノルマが何部拡張してこいと決められますので、そうすると、ぱんぱんと拡張ができればいいですけれども、できないと結局、日曜日もやるし、学校を休んでやるという形にもなるわけです。そしてそういう拡張を夜遅くまでやるといっても、やはり九時ごろまでぐらいしか人のうちにお金を取りに行くということはできませんので、今度は九時ごろから十一時までは翌日の折り込みと仕分けや何かをするというので、大体十一時でないと自由時間にならないんですね。それから、自分たちはおなかがすいたから夜鳴きのラーメンでも食べて、銭湯に行ってというと、早くても十二時、ちょっとラジオのディスクジョッキーでも聞きたいということになると一時になってしまうというんですね。そうすると、朝四時ですからね。どんなにぎりぎりに寝ても五時間、普通は四時間しか夜、睡眠時間がないんですね。ですから、学校へ行っても眠るわけです。朝、御飯を食べても、また寝てしまって学校に行かれないというようなことになったり、その上に会社の集金をさせるということになりますと、会社ということは昼間ですので、月のうち何日かは学校に行けない。これは販売店によっても違うと思います、昼間集金させているというところは全部じゃないかもしれません。しかし、夜の集金とか仕分けとかで、夜十一時までということは、これはもうほとんどの販売店がやっているわけです。
 ですから、半年の間は無我夢中で、不眠不休のような形で、日曜はただただ寝るというような形でやって、六カ月たって、もう続けられないという形でやめようとすると、一番少ないので五十万六千円を返さなければやめられないというわけです。それは販売店なんですよ。よく聞いていただきたいのです。私の知っている弁護士のところですけれども、こんなことがいいのかというので、親が弁護士事務所に訴えたわけです。弁護士の方から、そこに、なぜ五十何万、六十何万を払わなければならないのか明細を出せという形でやりますと、すぱっと何にも言わない。そして解放してくれるというか、やめさせてくれるわけなんです。そしてその子供は親からのお金で学校へ行って卒業できたわけですけれども、結局、この奨学会にはひどい目に遭ったということで、この人は弁護士によって救われたわけですけれども、弁護士が出ていけば払わなくてもいいようなお金なのかということですね。そこのところに私はどうしても疑いを持つのです。
 時間がちょっと足らないのですけれども、ちょっと読んでみますと、おたくの方の出された労働基準法のこのコンメンタールに「一たん使用者が特定の費用を与え、一定期間の間使用者のもとで勤務しない場合は、損害賠償としてその額だけ払わせるという損害賠償予定の契約と考えることがあり、その場合、本条違反となる。」となっている。ですから、結局一万、二万、三万の借金ならば、それによって自分が拘束されたということにはならないかもしれませんけれども、十八歳の少年が五十万、六十万の借金を返さなければやめられないという状態は、これは明らかに拘束されているというふうに思うわけです。
 そういう点で、私としては、これが違反だから罰してくれということを言っているのではなくて、やはりいまの日本の状態の中では、子供たちが大学、各種学校に行くのに親からはお金がもらえない。だけど各種学校へ行きたいというので、新聞配達をしながら学校に行かれるということは、私は基本的にいいことだというふうに思うのです。ですから、こうした労働基準法違反が行われないように、まず千代田学園が責任を持つと同時に、こういうふうに返還をしなければならないというのではなくて、育英奨学会がやっているように、途中でだめだというときは免除措置をつくっていくというふうにすれば十六条違反にならないじゃないか。これは明らかに労働基準法違反じゃないか。これが違反でないというんだったら、脱法行為は何でも許せるというぐらい、本当にはっきりしている違反ではないかと思うのです。私は、その点を罰してくれというより、直してほしいという形で、いま言っているわけなんです。そういう点で御回答をいただきたいと思います。

○小粥説明員 先生御指摘の奨学会の実態については、私ども承知してない点もあったわけでございます。いままで私どもで承知しておりましたのは、奨学会の名において販売店から奨学金の原資を徴取し千代田学園の方に払う。二年の販売店での業務ができない場合の返済については、やはり、その奨学会に対して返済をするというふうに承知していたわけでございます。それがいま先生のお話のとおりですと、むしろ返済も各販売店主、つまり雇用されているところに直接返済するということになりますと、基準法十六条の問題の疑いが出てまいります。その点はさらに実態を調べたいと思います。その上で、そうしたいわゆる人身拘束的なことにならないような事態に持っていきたいと考えております。

○田中(美)委員 支払いの場合は、学校に行きますと学校が奨学会へ行きなさいと言う。奨学会へ行きますと、そこから販売店に紹介してくれる。子供はそこに行くわけですね。そうして奨学会がお金を払うときは直接子供にくれないのです。それは五十万という金ですからね。それで奨学会が販売店主に、早く金を学校へ払ってくれ、こう言うわけですね。学校へ払いなさいという催促をするわけです。ですから、奨学会は全然子供に金はくれませんし、奨学会も恐らく金は受け取っていないと思うのです。販売店が学校に直接払い込むわけですね。催促されるときは、これはもう奨学会じゃないのです。私の聞いた事例は明らかにみんな販売店主なんですね。
 ですから奨学会との契約でしたら、いやなら、すぐやめて、それでお金を返すのをどうするかという話になるのだったらば、いわゆる貸し借りの関係ですよ。しかし、やめられないで人質に取られている、五十万持ってこなければ、一年目だと八十万持ってこなければと。そうすると、一年たつと、もういやだと言ってくれたりするのですね。そういうふうになると、今度はしようがなくて、もう一年間は通うということになって、販売店主は金を返さない限りは、もう離さないわけですね。それで親のところに請求する、本人に請求するという形で、もうそのときは奨学会ではないわけです。
 ですから、これにちゃんと書いてあるように、奨学会、括弧して販売店なんですね。奨学会との貸借ならば、そこと交渉するというのならわかりますけれども、販売店へもう体は取られてしまっているわけですから、そういうことで、非常に悲劇だということで、私のところに何人もその子供が来ました。それから親も来ました。それから親が地方から電話で、どうしようもないんだ、先生に訴えたってどうしようもないんだ、おれがだまされたんだから、こういうふうな電話を、お酒を飲んでかけてきた父親もあるわけです。母親も涙をぽろぽろ流すわけですけれども、二年たっても単位がとれない。しかし、二年たちますと百何万の金を返さなければならないというので、泣く泣く、この三月まで勤めたある子がいます。
 もう一人の子の場合は、弁護士のあれで払わずに早目にやめたわけですから、いいわけですけれども、その子の場合には親が迎えに来たわけですね。それでその子を連れて私のところに来たわけです。私はしようがないから、もう二年勤め上げたから返さなくていいわけですから自分の故郷に帰れというふうに言ったわけですけれども、本人はいやだと言うのですね。どうしてかと私はその子に聞いたわけです。親は泣きながら帰ってほしいと言うわけです。親は非行になるのではないかという疑いを持って心配しているわけですね。そうすると本人は、同級生に恥ずかしい、同級生は大学へ行ったり勤めたりして、勤めた人間は何々会社に高校を出て二年間勤めたという実績ができている。ぼくの場合には、いわゆるアルバイトで新聞配達をしていたというだけで、学校の単位もとれないし何にもならない。これではとても帰れない。だから東京にそのまま居残って、どこか夜のバーテンにでもなろうかというわけですね。
 これは一つの事例ですけれども、私はその気持ちというのはとてもよくわかるわけです。大人から見れば二年のロスぐらいというふうに思う人もあるかもしれませんけれども、感じやすい十八歳の少年というのが、いま非常に多くの販売店で働いている。そのおかげで私たちが、外国のように外に買いに行かないで自分のうちで新聞を読める。それはこういう少年の犠牲のもとにあるのだということで、その子を見て本当にかわいそうで涙ぐんでしまったわけです。
 ですから、いやになったときには、きちっと免除の措置があり、そしてもっと現実に学校に行き――睡眠時間が三時間、四時間なんということは、どんな強健な子供でも、大人だって続くわけはないのですから、そういうところの責任を学校自体がもっときちっと持って、そして新聞配達をしながら学校へ行かれるように、販売店主が労働基準法違反を平気でできるような状態に置いておかないように、きちっとした指導をしていただきたいというふうに私は思います。これはもう非常に大きな社会問題だと思いますので、ぜひ労働省の指導を強くして、徹底的に、いますぐ改善をしていただきたい。あすの朝もまた、その子供たちは新聞を配っているわけですので、ぜひその点をお願いしたいと思います。大臣、どうでしょうか。

○藤井国務大臣 勤労青少年、これは成長期にある若い人が働きながら勉強する、こういう立場の人ですから、やはりその保護と健やかな成長を念願していくというのが政治の務めだと思うのであります。したがって、労働基準法なりあるいは勤労青少年福祉法、この法律の線に基づいて、いろいろな施策は進められているわけでございまして、仮にそういった法の精神に反するようなことがあるならば、これは厳重に措置しなければならない、また正しい方向に指導しなければならない、このように思います。
 いま具体的なお話でございましたが、具体的なことは、この事実をよく調査して善処しなければならぬ、こう思います。
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けわしくても厳しくても~ある新聞奨学生の過労死裁判の闘い

 上村裁判(読売育英奨学生過労死事件の遺族が読売新聞社らを相手取っておこした裁判)の終結をうけ、2000年に同支える会が発行したブックレットを掲載しました。販売は行われず、極少数の関係者に配布されたのみで今では現物を入手することが非常に困難になっています。
 この記憶を風化させることなくがんばって行きたいと思っています。

けわしくても厳しくとも_表紙

けわしくても厳しくとも_目次

けわしくても厳しくとも_2&3

けわしくても厳しくとも_4&5

けわしくても厳しくとも_6&7

けわしくても厳しくとも_8&9

けわしくても厳しくとも_10&11

けわしくても厳しくとも_12&13

けわしくても厳しくとも_14&15

けわしくても厳しくとも_16

けわしくても厳しくとも_17

けわしくても厳しくとも_裏表紙

【記事】時給5百円未満!朝日新聞販売店の奨学生

 新聞販売問題を中心に追っておられるジャーナリストの黒藪哲哉さんが、新聞奨学生の告発記事を書かれました。朝日新聞の販売店で働いていた中国人留学生の待遇についてです。

時給5百円未満!朝日新聞販売店の奨学生、韓国ブローカー2万円“ピンハネ”で
黒薮哲哉
08:50 03/07 2009

中国人新聞奨学生らが在籍するMANABI外国学院のパンフレット。 外国人らは、夢を背負って来日するが・・・・。国際交流に搾取が介在していいのだろうか?

 中国人を新聞奨学生として受け入れている東京都内のASAが、韓国のブローカー(仲介業者)に、「学生管理費」の名目で1人あたり月々2万円を振り込んでいることが分かった。その結果、この青年の手取り給料は月5万5000円に。時給にすると500円未満で、東京都が定める最低時給をはるかに下回るほか、ピンハネ行為は中間搾取を禁じた労基法にも抵触する。不祥事や犯罪が絶えない新聞販売の現場に、優秀で「激安」な人材を海外からリクルートせざるをえない新聞業界の苦境がかいま見える。
【Digest】
◇奨学生は「金の卵」
◇留学斡旋業者を通じて来日
◇問題のFAX文書
◇(株)EARH LING
◇「中国青年堂」の口座へ
◇不透明な新聞社との関係

(続きはMy News Japanで)

 これまでの好況下の中では専業(販売店正社員)、新聞奨学生ともに応募者が少なく、外国人留学生の新聞奨学生が増加傾向にあったようですが、言葉の壁や奨学生の弱みに付け込んだ悪質な行為もうわさで耳にすることもあります。外国人研修生の問題が取りざたされていますが、新聞奨学生においてもそれに近い実態があるようです。
 
 昨今の不況で販売店の担い手不足の問題に関しては解決しつつあるので、今後外国人新聞奨学生は減少する可能性もありますが、解決に取り組んでいきたいと思います。

2008.5.23 朝日新聞


記事より一部引用(前略)

  新聞販売所従業員と学生の二足のわらじを履く生活でした。最初の1年は比較的まじめに通いましたね。全共闘運動が盛り上がる寸前で、「学費値上げ反対」と「70年安保粉砕」の立て看板が全国の大学に掲げられていました。初めてデモに参加したのが、69年4月28日の日比谷野外音楽堂で開かれた沖縄奪還闘争だった。 東京都内の新聞販売所で寮生活を送りながら朝夕刊の配達、集金をこなしました。奨学生は「4年間働く」というのが条件だったんです。従業員は十数人。朝夕食は寮で食べることができました。ところが、そのころ待遇はひどくて休みも年に1、2回しか取れなかったんです。

■ 伊藤さんは販売所の待遇改善運動に専念した。販売所従業員と新聞社の臨時雇用者らで組織する「全臨時労働者組合」を結成し、各新聞社に押しかけ銀座をデモした。
 大学の新聞奨学生だけでなく、新聞社に臨時雇用された発送・輸送業務の人たちにも呼びかけて、69年11月に全臨労を結成しました。十数校の大学の奨学生と、ほとんどの新聞臨時雇用の人たちが加盟してくれました。組合運動をつぶそうと、木刀などを手にしたおっかないお兄さんたちが、襲いかかってきたこともありました。

■ 学費滞納で東洋大学は除籍処分となった。販売所は無断欠勤を理由に解雇された。そして初めての逮捕。伊藤さんの中で反骨精神が培われたという。 3年終了の時点で、学費滞納を理由に大学は除籍処分となっていました。労組の中央執行委員として争議を指揮したり、待遇改善を求め各新聞社に押しかけたり、販売所の自転車を何十台も連ねて銀座をデモしました。壮観でした。
 東京都北区の拠点販売所にバリケードを築き、ストを決行しました。この時、販売所側にバリケードを破られ、寮を追い出されました。組合員はヘルメットに旗ざおで販売所奪還闘争を繰り返しました。機動隊も出てきました。
 それがもとで、私は無断欠勤を理由に販売所を解雇されました。10日後には、刑法の凶器準備集合罪と東京都公安条例違反で、初めて逮捕されました。北区の王子署に10泊11日ぶちこまれました。(後略)

1997.12.10 新聞販売労働者・新聞奨学生の労働に関する質問

引用元
新聞販売労働者・新聞奨学生の労働に関する質問主意書
参議院議員吉川春子君提出新聞販売労働者・新聞奨学生の労働に関する質問に対する答弁書

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質問主意書

質問第一二号
新聞販売労働者・新聞奨学生の労働に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成九年十二月十日


吉 川 春 子   

       参議院議長 斎 藤 十 朗 殿



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   新聞販売労働者・新聞奨学生の労働に関する質問主意書

一、新聞販売労働者の労働実態
 我が国の日刊新聞は発行社約一〇〇社、発行部数で七二〇五万部(平成七年一〇月現在)に達し、普及率は一〇〇〇人当たり五七八部にのぼり、発行部数、普及率ともに世界第一位を誇っている。日本の新聞発行部数がこのような莫大な数字まで伸びた要因は、我が国特有の制度である戸別配達制度と、拡材といわれる物品を使っての激しい部数拡張競争にあると言っていい。そしてこの戸別配達制度も、過酷な部数拡張も、すべてそれを担っているのが、全国で四八万人を超すといわれる新聞販売労働者である。
 この新聞販売労働者は、発行本社から部数拡張のノルマを課せられ、極めて劣悪な労働環境におかれている。すなわち午前二時半起床、広告の折り込みから始まり朝刊の配達が終わるのが六時半。シャワーを浴びて朝食をとって仮眠、午後一時半からは拡張・集金業務、夕方四時頃からの夕刊配達、夕食後から深夜に及ぶ集金業務と、一日の実労働時間は一〇時間を超え、拘束時間は一五、六時間にもなっている。「まとまった睡眠時間がほしい。」というのは彼らの切実な要求である。しかも現場から賃金の遅配・欠配、罰金の強制、休日労働の常態化、時間外割増賃金の不払い、有給休暇をとらせない、などの労働基準法違反、健康診断を実施しないなどの労働安全衛生法違反など、前近代的とも言える労働実態を訴えられている。交通労働災害による新聞販売労働者の年間死亡者数は全産業六五二人のうち六五人とその一割を占め、とくに二輪車乗車中の災害は四〇人中三五人を占めていることからも過酷な労働であることが明らかである。

二、新聞奨学生の労働実態

 新聞販売労働者四八万人のうち、五%を占めている新聞奨学生の労働・生活実態は専業販売労働者に比べても劣悪である。
 ほとんどの大手新聞社は各社ごとに奨学制度をもうけ、毎年奨学生の募集をしている。新聞奨学生は、発行新聞社の系列販売店で稼働することを条件に、奨学資金が貸与され、「働きながら学ぶ」ことを基本とし、奨学生の募集パンフレットには、学業と仕事の両立が可能なように、労働時間の表示から奨学生がする仕事内容、給与の表示までなされている。
 しかし、各社の奨学生募集パンフレットに表示された労働条件がそのまま守られていることはほとんどない。即ち新聞奨学生も専業の労働と同様、朝三時頃からの朝刊配達、夕方四時からの夕刊配達に加え、深夜に及ぶ集金業務、そのほか古紙回収、部数拡張等の業務を課せられている。その上奨学生は日中学校に通うことが前提である分、その労働と生活は専業の新聞販売労働者にくらべても過酷である。また、休日出勤の常態化、給与の遅配・欠配、健康診断を実施しないなどの労働基準法違反・労働安全衛生法違反の実態も専業労働者と同様である。新聞奨学生は、奨学生をやめると奨学資金を一括返済しなければならないため、奨学生をやめたくてもやめられない。このような状況で、学業放棄においやられる学生が発生している。
 一九八七年に、東京新聞販売労働組合が新聞奨学生を対象に行ったアンケート調査によると、回答を寄せた奨学生の一ヶ月の平均労働時間が二二八時間に及んでおり、「配達時間、集金時間を減らしてほしい。」との声が多く寄せられている。また一九九六年一一月に実施した「新聞配達員・奨学生一一〇番」では、三時間の間に合計二五件の相談が寄せられた。奨学生の相談にはまず、「セールスは任意という条件だったのに、毎日やらされている。」、「パンフレットでは朝四時出勤のはずが、実際には二時半に出勤させられている。」、「パンフでは四週六休のはずが実際にはひと月で四日も休めない。」など、募集パンフレットの労働条件違反、「新聞の不着で罰金五〇〇円、客からのクレーム一回で二万円の罰金を取られる」、「寝坊したといっては給与支払いを遅らせる。」、「有休を取らせてくれない。」など明白な労働基準法違反、「夕刊を配ると予備校に行けない。」、「学校に行けずに進級が難しくなった。」、「奨学生をやめたいが一括返済義務があるのでやめられない。」など、仕事のために学業を放棄せざるを得なかったり、一括返済義務に縛られて奨学生をやめるにやめられない、などの奨学生の苦悩の声が寄せられている。
 以上の実態をふまえて、以下質問する。

一、新聞販売労働者の労働条件について

1 労働省は一九九三年~九四年にかけて新聞販売店について監督を行ったと聞くが、その結果を明らかにせよ。
2 新聞販売労働者についても今年四月から週四〇時間制が適用されている。従来から新聞販売店ではその業務の特殊性から一ヶ月単位の変形労働時間制がとられてきた。しかしその内容は極めてずさんで、始業終業、休憩時間などは形式的に定められているにすぎず、慢性的な超過労働が行われているのが実態である。産業の重要性に鑑み全国的な調査をすべきであると思うがどうか。
3 新聞販売労働者の交通災害対策を特別に強化すべきであると思うがどうか。
4 販売労働者の過酷な労働条件の背景には発行本社の部数拡張販売政策があり、発行本社の政策改善なくしては販売労働者の労働条件の改善はあり得ない。政府は発行本社ならびに業界団体に対し強力な指導を行う必要があると思うがどうか。

二、新聞奨学生について

1 新聞奨学生に対し奨学資金を貸与する条件として、新聞各社は系列販売店で稼働することを条件としている。新聞販売店をやめることになれば、奨学資金の一括返済を迫られる。このような新聞奨学生制度は、労働基準法で禁止された前借金契約の疑いが強いので、一定期間返済を猶予する、あるいは長期の分割返済とするなどの是正指導をすべきと思うがどうか。
2 新聞奨学生は、新聞委託の育英会と奨学生契約を結び各販売店で労務を提供するが育英会で示される勤務条件と販売店での実際の労働条件が異なり、かつどちらが有効な内容かがあいまいになっているなど、労働契約の当事者及び内容が明確ではないところに問題がある。奨学生としての契約と労働契約について明確になるよう指導すべきと思うがどうか。
3 新聞奨学生は過酷な労働条件のもと、やめたくてもやめられず、健康を害していく場合もあり、中には読売育英奨学生が平成二年一二月に過労で死亡した事例のように、奨学生の本来の目的である学業の成就が阻害されている実態は、関係官庁で相協力して改善されるべきだと思うが、関係する官庁及び改善の取り組みについて明らかにされたい。新聞奨学生の労働条件は早急に改善されるべきである。この点についての政府の見解を問う。
4 新聞発行本社はそれぞれ奨学制度を設け、奨学生募集パンフレットで具体的に労働時間、仕事内容、給与等の労働条件を提示している。しかし、実態はほとんどこの労働条件が守られていない。この実態は新聞各社が自覚しているところである。奨学生は新聞社の社会的信用にもとづいて、奨学生に応募するのであり、このような奨学生の労働条件違反は新聞社の責任である。政府はこのような実態に照らし、発行新聞社各社に対し、新聞奨学生の制度改善を強く指導すべきであると思うが、政府の見解を問う。

  右質問する。