1980.11.19 参議院商工委員会 新聞奨学生の雇用実態に関する件 より抜粋

発言者情報

日本共産党          市川 正一
文部省大学局高等教育計画課長 十文字孝夫
労働省労働基準局監督課長   岡部 晃三
通商産業大臣         田中 六助


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○市川正一君 本日は、時間も限られておりますので、私は政策論ではなしに実態論に基づいて幾つかお伺いしたいのでありますが、大臣のお時間もございますので、大臣がいらっしゃる間にぜひじかにお聞き取りを願いたい問題から入っていきたいと思います。
 去年の十一月十一日の本委員会で私は新聞の過当な拡販競争の実態について取り上げました。そして、販売店及び販売店労働者が過酷な経営条件また労働条件に置かれているということを、大臣の前にディジタル時計などいわゆる拡材の現物をお見せもいたしまして指摘いたしました。きょうは、そうしたもとで、もう一つの問題、新聞奨学生の問題について伺いたいのであります。この奨学生というのは、奨学金のあの奨学でありますが、これは新聞配達の主力部隊となっている、全国で約二十万人いると言われておりますが、向学心に燃えて、そういう青年、学生ががんばっておるわけでありますが、もとより働きながら学ぶというこの制度を私どももいささかも否定するものではありませんし、大いにこれを発展さすべきだ。しかし問題は、学ぶことが時間的にもまた経済的にも肉体的にも保障されないようなそういう人権無視が横行しているわけであります。
 文部省にお伺いしたいのでありますが、文部省として、新聞奨学生のこの奨学制度ということについて実態を把握していらっしゃるかどうか、まず伺いたいと思います。

○説明員(十文字孝夫君) 私どももそういう話があるということはかねてから聞き及んでおりまして、新聞奨学生いわゆる新聞配達員奨学事業といったものの実態につきましては、事業主体としてあるいは新聞社あるいは新聞販売店の連合体といったようなものがいろいろな形で奨学と称する制度を行っているということにつきましては、それぞれの実施主体に電話で照会をいたしたり、あるいはパンフレットなどにおきましてその実情を、まあ十分とは言えませんけれども、ある程度把握しているつもりでございます。

○市川正一君 文部省は、九月七日のことでありますけれども、文化庁の牛尾文化普及課長補佐らが直接奨学生から事情を聞かれて、文部省とも相談して実態調査を約束されているのです。これは確かめていただきたいのですが。
 私はここに何社かの奨学制度についてのいわばパンフレット、案内を持ってまいりました。朝日もあります。読売もあります。サンケイもあります。毎日もあります。大体中身は一緒です。これを見ますと、事業内容について、これは一例でありますが、「朝・夕刊の配達、チラシ広告の折り込み作業、そのほか簡単な事務など。集金・セールスはありません」こううたっているのですね。そして、これはまたあるところのものでありますが、「仕事の内容」「配達だけ」ゴシックでしかも囲みを入れてこう言って青年、学生をいわば勧誘しているわけです。また、労働時間についても一日五時間ぐらいだというふうに明記しております。そのほか福利厚生面、週休制度、給料、結構なことがずっと並んでいるのですね。ごらんになっていると思います。ところが実際はどうか。全くこれとはかけ離れております。まず仕事の中身と拘束時間でありますが、配達だけどころか、集金はもとよりセールスもやっておるわけであります。そして、新聞の拡張の責任を持たされている。いわば聞いて極楽、見て地獄が実態なんです。
 研究用のテキストというのもあります。ここに各社のを持ってまいりました。このテキストを見ますと、たとえば、セールスは重要、部数がふえれば君の待遇が安定する、攻撃こそ最大の防御、新聞読者獲得のコツ、まさにこの拡張の要員を養成するためのテキストになっています。また別のある社のを見ますと、セールスはあらゆる業種にわたって最も必要な部門です。自分の受け持ち区域は自分の責任区域であるとの自覚のもとに、全戸読者化を目標に励んでください――これは一般の従業員なら別ですが、学生を、先ほどお示ししましたようなパンフレットでいわば勧誘して、そして義務づけていくんですね。私は、これは非常に問題だと思うのでありますが、さらに業務時間も結局五時間どころか、私、直接に何人かの学生から聞きましたけれども、十時間を超えるということもしょっちゅうあるというのです。これはとても勉学と両立することはできぬというのが率直な奨学生の声です。
 そこで、文部省に重ねてお伺いしますが、教育的見地から見てもこういう新聞奨学制度の案内とそして実態、いわば隔たり、これは私、重大だと思うのですが、文部省の見解を重ねて承りたい。

○説明員(十文字孝夫君) ただいま先生御指摘の、いわゆる新聞奨学生の労働条件の実態につきましては、私ども、先生がお示しになりましたパンフレットも拝見いたしましたが、そこでは一応配達の時間あるいはチラシの折り込みといったようなことで、標準的には五時間ないし六時間というふうに示されておりますが、そのほかに集金とかあるいは販売拡張の仕事とか、そういうことが臨時的に重ねられるというようなことがあるようでございますが、そういうパンフレットで知る限りのことでございまして、その本当の実態につきましては、それぞれ個々の新聞販売店におきます労働上の問題でございますので、私どもとして詳細には承知いたしておりません。しかし、一般論といたしまして、私どもとしましてはかねてから働きながら学ぶ勤労学生に対しましてはそれぞれの職場におきまして十分勉学の時間を確保していただくように、たとえば通信教育の学生の場合には夏休み期間中にスターリングへ出かけるというようなことがございますが、そういった面について十分配慮をするように局長から各大学を通じまして事業主に対してお願いをするというようなこともしているわけでございます。ぜひ私どもとしましては勤労学生についてその向上心に基づいて十分勉学が継続できますように御配慮いただきたいと考えている次第でございます

○市川正一君 先ほども言いましたように、九月の七日の日にこの問題について直接にじかに言っているのですよ。牛尾文化普及課長補佐がこの問題について実態調査をやるということを約束されているんですね。ですから、そういう点からいま初めて聞いたようなお話ではこれは通らぬのですよ。だから、実態調査をちゃんとなさるということ、この点確約いただけますか。

○説明員(十文字孝夫君) 繰り返しになりまして恐縮でございますが、先ほども申し上げましたように、要するに個々の販売所におきます労働条件の実態の問題でございますので、これは文部省というよりもむしろ労働省が監督される問題ではないか、労働省のやはり権限の範囲内においていろいろ調査なさるということが一番いいのではないか、適切ではないかというふうに考えております。

○市川正一君 労働省には労働省にちゃんと聞きますよ。私が言っているのは、教育上の見地から見て、大部分が学生ですよ、こういうことが好ましいのかどうかということを踏まえてあなた方はそんなもの知らぬとほっとくのですか、それを聞いているのですよ。そんなものは労働省に任せておいたらいい、わしゃ知らぬと言うのですか。

○説明員(十文字孝夫君) 私ども決して、そういう実態がありとすれば、望ましいことであると考えておりません。したがいまして、先ほど申し上げましたように、筋としましてはやはり労働省の問題でございますので、私どもとしても十分労働省の方にそういう調査をし指導していただくということで、お願いを申していきたいと思っております。

○市川正一君 そうすると、望ましいことでないということが一点、そしてこの問題については重大な関心を持って、労働省ともよく協議して実態調査、しかるべき措置に取り組むと、こういう理解でよろしゅうございますね。

○説明員(十文字孝夫君) はい、そのとおりでございます。

○市川正一君 はい、わかりました。
 それじゃ労働省に伺いたいのでありますが、私どもが調査しましたところでは、これだけではなしに、週休あるいは有給休暇、これがないというのが半分あります。また、健康診断は一〇〇%がありません。また、就業規則も九〇%がありません。また、健康保険、厚生年金も六〇%以上ありません。そういう状態であります。労働省はこういう実情について当事者から要請を受けておられるはずでありますが、実態調査もなさって、こういう奨学生制度をつくっている発行本社に対して改善の指導をなさるべきだと思いますが、いかがでしょうか。

○説明員(岡部晃三君) 新聞販売労働者の問題につきましては、従来からいろいろ労働基準法上の問題があるということで、一つの重点として労働基準法の施行に当たっておるところでございます。まあこの問題につきましては、各都道府県労働基準局におきましてそれぞれいろいろな手法で是正を図っているところでございますが、最近におきましてもこの三年間この問題を重点としてあえて取り上げておるところが全国で二十局あるわけございます。そのうち本省に取りまとめが報告されましたものにつきましては、昨年の先生の御質問にありましたような状況をお届けしたわけでございますが、その内容を見ましても、やはり就業規則の不備の問題、あるいは年少者の問題、休日労働の問題等々、いろいろ挙がっているところでございます。今回私どもといたしましてさらに新聞労働者の問題、特に奨学労働者の問題につきまして、日本新聞協会に対しまして十分な注意を促したという、ごく最近の経緯もあるところでございます。

○市川正一君 重ねて聞きますが、給料支払いについて切り取りというのがあるのです。これは労働省御存じだと思いますが、どういうことかというと、自分の担当している部分の集金ができない場合には残証と呼ばれている未収金分を給料からいわば天引きされる、そのかわりに請求書を渡されるという制度であります。これは明らかに労働基準法の二十四条違反でありますが、こういうことが公然と行われている。ある新聞社の場合、ひどい場合には、これは私ここに現物も持ってまいりましたが「差引証券分」と書かれて未収金を給料から差っ引かれているというのがあります。そして、手取り五円しかなかったという実例も実際にあるのです。私はこういう点で労働省として発行本社に対して切り取りをやらせないという厳重な指導がいまや求められていると思いますが、この点いかがでしょうか。

○説明員(岡部晃三君) この問題は特に東京地区におきまして、東京の各新聞販売店に働く労働者の方から東京労働基準局に対して、過般申し出がなされたところでございます。労働基準法二十四条におきましては賃金の全額払いの原則を定めているわけでございまして、法定の除外事由がなくて賃金の一部を控除するというふうなことは、もとより同条に違反するところでございます。したがいまして、いま御指摘の切り取りというふうなことがもしございますれば、それは違反の疑いがきわめて強いということになるわけでございます。
 そこで、そういう申し入れがございましたので、東京労働基準局におきましては、各新聞社を通じましてその系列ごとに、東京の全新聞販売店千三百十店に対しまして、過般、十月十四日から十一月六日にかけましてこのような違反を生ぜしめることがないように強力に指導したところでございます。

○市川正一君 大臣にお伺いいたしたいのでございますが、私もきょうは時間がございませんのでもう触れませんが、たとえば、新聞が不配達いたしますと一件について二千円の罰金制度をつくって給料から天引きしていくというふうな例もございます。こういう、余りにもひどいので配達員をやめようと思っても、借りている奨学金を一度に返さぬことにはやめさしてくれぬのです。足抜くことができぬのです。そこで苦しくてもそのまま続けるか、それとも学校の方をやめるか、結局そういうことに追い込まれていくんです。私、統計をとってみますと、そういう中で結局体がもたぬということ、勉強もできぬということで、年間約七割の学生がやめていくのです。そうすると、その後をまたこういう甘いうたい文句をえさにして次々と奨学生を募集していきます。こういうことのいわば繰り返しでやっているわけですね。ある奨学生は次のように訴えています。
 四年間やり抜いたという満足感や喜びなど微塵もありません。四年間、まるでタコ部屋か女郎部屋、金がないから縛られていただけです。きれいな謳い文句にのせられて、自分も大学へ行けると夢をふくらませて新聞奨学生になり、だが、そのあまりの苛酷さに打ちひしがれて、悄然と田舎へ帰っていった仲間が、どれほど僕の周りにいたかこう言っているのです。
 大臣、以上じかに大臣のお耳から聞いていただきましたが、これは新聞にもかかわることでありますので、なかなか実態としてはマスコミにも載りにくいんです。先ほど大臣御自身も新聞界の出身だと、こうおっしゃいましたけれども、社会の木鐸と言われる新聞、その発行本社が設立したこういう奨学生の現状というのは、私は放置できないと思うのです。ましてや学びたいという、そういう夢をふくらました、向学心に燃えた青少年の純真な気持ちをいわば踏みにじっているという点で、私は奨学制度のいわば一番中心である発行本社自身がこういう改善に積極的に当たるべきじゃないか、そして通産省としてもそういう方向でぜひ強力な指導をしていただく必要があるんじゃないか、こう思うのでありますが、強くそういう要望を込めて大臣の御所見を最後に承りたいと思います。

○政府委員(植田守昭君) 過去からの事実関係の経緯もございますので、私からちょっとお答えさしていただきますが、私ども、いまお聞きしておりますと、いろいろと文部省なり労働省なり直接の所管の問題があろうかと思いますが、私どもにつきましてもかねてから御要望もございますので、この問題……

○市川正一君 審議官、済みませんが、大臣のお時間がありますので、ぼくもそれを心得て進めているつもりですから。

○政府委員(植田守昭君) はい。新聞本社との話し合いの問題になるわけでございますが、率直に申しまして、残念ながら現時点におきまして私どもと新聞本社との間で全般的に話し合いを行い得るという状況は必ずしも十分醸成されておりません。しかしながら、販売店の問題につきましては、発行本社の団体でございます日本新聞協会とは本年の九月でございましたか、話し合いを行いまして、今後連絡はとり合っていくというふうなことで話した経緯がございまして、販売店の実情調査等につきましてもいろいろと困難な問題もございますが、そういったところとの連絡は絶やさないでやっていきたいというふうに考えております。

○国務大臣(田中六助君) いま植田審議官がお答えしたとおりでございますが、私は、根本的には商業新聞の過当競争にあるのじゃないかというふうに思いますし、学生が非常に苦労しておるというようなこと自体、これはやはり大きな社会問題でございますし、新聞協会にただいま審議官の方から申し上げましたように、一応相談をしておりますけれども、私は、さらにこれを、抗議というようなことではなく、まあそういう意味を含めて十分話し合っていって、こういうことがなくなるように対処しなければならない、政治家としてもやはり一つの責任のあることではあるまいかというふうに思っております。
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